2025年に「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は43社(前年57社)で、社数は約2割(前年比24.5%減)減少したが、募集人数は1万3,175人(同31.6%増)と急増した。
大手の構造改革の加速で、募集企業の約7割が直近決算で黒字と業績好調な企業で取り組みが目立つ。これまでの人員削減とは様相が異なり、将来の事業転換を見越した「黒字リストラ」は今後も広がるとみられ、対象年齢も中高年の募集が定着している。
2025年は業績好調な企業で「黒字リストラ」が広がった。三菱電機、三菱ケミカルグループ、明治HD、ソニーグループ、日清紡HDなど名門企業も名を連ねている。
これまで人員削減は、不況期に人員削減に踏み切る「業績悪化」対策が中心だったが、2025年は好業績の企業が大幅な人員削減に取り組むケースが相次いだ。なかでも中高年を対象に実施する動きが加速し、9月に募集を発表した三菱電機は53歳以上が対象で、三菱ケミカルグループでは50歳以上の1,273人が応募した。10月に募集を発表した明治HDは50歳以上の44人が応募した。
中高年対象の募集が中心の製造業は、競争力強化が急務になり、パナソニックHDなどは構造改革に追われている。日本経済をけん引し、代表的な雇用の受け皿でもあったが、大きな転換期を迎えているようだ。賃上げの流れが加速し、将来性が乏しい事業部門の大胆な見直しや新規事業への進出など、構造改革と人事政策が進んでいる。このため、もう一段の人員構造の見直しの可能性もあり、2026年も早期・希望退職募集の大型化の流れが強まるとみられる。
※ 本調査は、早期・希望退職募集の具体的な内容を確認できた上場企業を対象に集計した。
※ 2026年1月22日公表分までの『会社情報に関する適時開示資料』などと東京商工リサーチの独自調査に基づく。

業種別は、グループの経営改革で約5,000人の人員削減を発表したパナソニックHD、1,500人の募集をしたジャパンディスプレイ、ネクストステージ支援制度特別措置を実施した三菱電機など、電気機器が18社(前年同期13社)と4割(構成比41.8%)を占めた。次いで、明治ホールディングスなど食料品(前年同期3社)、金属製品(同2社)、機械(同4社)、情報・通信業(同10社)が各3社で続く。

「早期・希望退職募集」が判明した上場43社の市場区分は、東証プライムが33社で、約8割(構成比76.7%)を占めた。東証スタンダードは9社(同20.9%)だった。
市場区分別の募集人数は、東証プライムが1万2,545人で2025年の募集人数に対して9割超(構成比95.2%)を占めた。東証スタンダードは595人、グロースは35人だった。

「早期・希望退職募集」を実施した43社の直近決算期の最終損益(単体)は、黒字29社(構成比67.4%)、赤字14社(同32.5%)で、黒字が約7割を占めた。
黒字企業の募集人数は1万505人で、全体の8割(同79.7%)を超えた。黒字の29社のうち、23社が東証プライム上場だった。
赤字14社の募集人数は2,670人で、ジャパンディスプレイやJUKI、シナネンHDなど。


2025年の「介護事業者」は、倒産以外で事業を停止した「休廃業・解散」が653件(前年比6.6%増)に達し、 4年連続で最多を更新した。倒産も過去最多の176件発生しており、物価高、人手不足の深刻さが増す介護事業者の苦境が鮮明になってきた。
「休廃業・解散」の653件のうち、訪問介護が465件(同3.7%増)と突出し、通所・短期入所が95件(同35.7%増)、有料老人ホームが23件(同8.0%減)と続く。

介護事業者(老人福祉・介護事業者)は、コロナ禍前からヘルパーなどの人手不足が慢性化している。さらに、高齢化が加速するなかで、賃上げが進む他産業に比べて介護職員への処遇改善が遅れ、人手不足に輪をかけている。このため、2024年10月の介護職員数は212万6,227人(対前年比+487人)と微増にとどまり、人材確保が喫緊の課題になっている。
また、大手の参入による競合や、物価高に伴う運営コストの上昇などで、先行きが見通せない介護事業者の諦めが「休廃業・解散」の増勢に反映しているようだ。赤字累積や過剰債務の拡大で倒産する前に、早めの休廃業・解散の選択が増えている。
倒産も過去最多を更新し、「休廃業・解散」と倒産が紙一重の状況が続いている。政府は介護職員の賃上げ対策や介護報酬の臨時改定など、介護事業者への支援を進めるが、すでに体力が低下している事業者への効果は未知数だ。
※ 本調査は、「老人福祉・介護事業」を対象に、訪問介護事業、通所・短期入所介護事業、有料老人ホーム、その他に分類した。倒産は、介護保険制度が始まった2000年以降、負債1,000万円以上を対象にした。「休廃業・解散」は、統計を開始した2010年(内訳は2013年)以降を対象にした。


売買を主力とする主な不動産業6,090社の最新期決算(2024年7月期-2025年6月期)は、売上高が17兆3,430億円(前期比7.9%増)と好調だったことがわかった。純利益も1兆3,063億円(同6.8%増)で、純利益率7.5%と高収益を持続。7年間では売上高、利益とも最高を記録した。
地価が4年連続で上昇する一方、実需や投資が活発だったことが背景にある。ただ、2025年の不動産業の休廃業・解散は2,000件(前年比3.3%増)、倒産は136件(同32.0%増)で合計2,136件(前年2,039件)に増えており、活況をみせるマーケットの中で二極化が加速しているようだ。
東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースで、全国の主な不動産業6,090社の最新期の業績を調査した。大手の寡占が強まり、売上高100億円以上は244社(構成比4.0%)で、244社の売上高合計は13兆4,198億円と全体の約8割(同77.3%)を占めた。
一方、売上高5億円未満は4,397社で社数は7割超(同72.2%)を占めるが、売上高合計は4億8,781万円(同2.8%)にとどまった。豊富な資金力と情報網を張り巡らせる大手が、優良物件を取得し、再開発などと併せた有効活用で業界をけん引している構図が浮かび上がる。
純利益は、8割を超す5,173社(同84.9%)が黒字だったが、約4割の2,398社(同39.3%)は減益で、人件費やコスト上昇で収益格差が広がっている。
なお、2025年の「休廃業・解散」は2,000社(前年比3.3%増)、倒産は136社(同32.0%増)で、合計2,136社(同4.7%増)が市場から退出し、過去10年間で最多を更新した。
不動産業界は、投資過熱による価格高騰と金利上昇で転換期を迎えている。大手が優良な物件を囲い込むなか、営業スタイルは従来の駅前店舗からSNSなどのAIツールを駆使した手法に変化しており、マーケットの変化への対応が、生き残りの分岐点になりつつある。
※本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(約440万社)から、日本産業分類の建物売買業・土地売買業を対象に、2024年7月期-2025年6月期を最新期とする7期連続で業績が判明した6,090社を抽出、分析した。
全国の不動産業6,090社の最新期の売上高合計は、17兆3,430億円(前期比7.9%増)だった。過去7年間をみると、売上高はコロナ禍に減少したが、最新期を含めて4年連続で前期を上回った。地価上昇や、資材等のコストアップ分の価格転嫁が寄与しているようだ。
利益合計は、1兆3,063億円(同6.8%増)と7年間で最大となった。3期前は前期比19.4%増と高い伸び率をみせたが、最新期は同6.8%増と増加率は一桁台に減速した。

最新期の売上高は、増収が2,748社(構成比45.1%)、減収は2,293社(同37.6%)、横ばいが1,049社(同17.2%)だった。
売上高伸長率は、10%未満の減収が1,578社(構成比25.9%)で最多。増収では、10~100%未満の増収が1,532社(同25.1%)で最も多く、0~5%未満の増収が1,494社(同24.5%)と続く。100%以上の増収も388社(同6.3%)あったが、業績は二極化が続いている。

最終損益をみると、黒字が5,173社(構成比84.9%)で、8割を超えた。
ただ、2期前の5,229社(同85.8%)、1期前の5,198社(同85.3%)と、緩やかに減少をたどる。
一方、赤字は917社(同15.0%)であり、1期前の892社(同14.6%)に比べ0.4ポイント悪化した。
黒字が徐々に減り続けている。

2025年の不動産業の「休廃業・解散」は2,000社(前年比3.3%増)、倒産は136社(同32.0%増)だった。合計2,136社(同4.7%増)が市場から撤退し、過去10年間で最多を更新した。
2022年以前の倒産は、年間90件を下回ったが、2023年に100件を超えて以降、高水準で推移している。また、2025年の「休廃業・解散」も、過去10年間で最多を更新した。
不動産業界を取り巻く環境は大きく変化しており、従来の営業スタイルから抜け出せず、コスト上昇を価格転嫁できない業者の淘汰は、今後も進むとみられる。


2025年の「自動車販売」倒産(四輪自動車のみ)は137件(前年比26.8%増)で、2016年以降の10年間で過去最多となった。
自動車販売業では、「中古自動車」を主に扱う小・零細販売店の淘汰が加速している。「中古車販売」倒産は、資本金1千万円未満が構成比88.1%(89件)と9割近くを占め、「新車販売」倒産の同77.7%(28件)と比べ10.4ポイント高かった。
水道光熱費などの事務所維持費や人件費などの上昇に加え、中古車価格の高騰などによる仕入難、在庫不足などが収益に影響している。さらに、金利上昇で借入負担が重みを増し、財務基盤がぜい弱な中古車販売店の経営悪化を招いている。
一般社団法人日本自動車販売協会連合会が公表した自動車登録台数は、新車登録が289万8,417台(前年比1.2%増)と増加したのに対し、中古車登録は363万2,179台(同0.8%減)と3年ぶりに減少した。海外からの引合い増などを背景に、オークションでの競売価格が高額で推移しており、供給不足から仕入れが困難な状況が続いている。
利益率では、「新車販売」が2022年の1.7%を底に、3年連続で改善をたどり、最新期(2024年10月期-2025年9月期)は3.1%に上昇した。対照的に、「中古自動車販売」は2023年の3.0%をピークに、2年連続で悪化し、最新期は2.1%にとどまっている。
倒産が増加を続けるなか、2025年の「休廃業・解散」も「新車販売」が262件(前年比4.8%増)、「中古車販売」が128件(同48.8%増)で、いずれも過去10年間で最多を更新した。仕入費用や人件費、借入金利などのコストは上昇が続いており、資金繰りが限界を迎えた自動車販売業者の退出が今後も増加する可能性が高い。
※本調査は、日本標準産業分類「自動車(新車)小売業」、「中古自動車小売業」の倒産(負債1,000万円以上)を集計、分析した。
2025年の「自動車販売」の倒産は、137件(前年比26.8%増)と3年連続で前年を上回った。
コロナ禍の資金繰り支援などで、2022年は65件まで減少したが、その後は支援効果が希薄になったことに加え、コスト上昇などでコロナ禍前の水準に戻している。
新車・中古車別では、「中古自動車販売」が101件と全体の73.7%を占め、過去10年で初めて100件台に乗せた。「新車販売」も36件(同20.0%増)まで増え、過去10年で最多となった。

資本金別では、「中古車販売」の最多が「1百万円以上5百万円未満」の53件(構成比52.4%)、「個人企業他」が17件(同16.8%)、「5百万円以上1千万円未満」が14件(同13.8%)で続く。
「新車販売」は、最多が「1百万円以上5百万円未満」の15件(同41.6%)、「5百万円以上1千万円未満」が9件(同25.0%)、「1千万円以上5千万円未満」が8件(同22.2%)で続く。
「中古車販売」は、「資本金1千万円未満」が89件と、9割近く(88.1%)に達した。「新車販売」の「資本金1千万円未満」の構成比は77.7%で、「中古車販売」が10.4ポイント高い。中古車販売業者は小・零細規模が多く、財務基盤が弱い業者の苦境が表れている。

「中古車販売」と「新車販売」のうち、2024年10月期から2025年9月期を最新期として抽出できた企業の業績動向を比較した。
最新期の売上高は、「中古車販売」が2兆1,261億8,200万円(前期比12.4%増)、「新車販売」が13兆7,711億6,200万円(同5.8%増)で、車両価格の上昇で中古車・新車のどちらをメインに取り扱う業者も売上は伸びている。
一方、利益率の推移は明暗がくっきりと分かれている。
最新期の「新車販売」は3.1%(前年2.6%)で、2022年の1.7%を底に3年連続で改善した。これに対し、「中古車販売」は2.1%(前年2.2%)にとどまり、2年連続で悪化している。
コロナ禍は部品不足などで新車の納期が遅延した影響で中古車の需要が上がり、中古車販売の利益率も改善した。だが、新車供給の回復に伴い、メーカー系列ディーラーが強い新車販売と、中古車販売の利益率は立場が逆転している。


2025年に上場廃止を前提にした株式公開買付け(以下、TOB)は80社、および経営陣による買収(以下、MBO)は32社で、合計112社にのぼることがわかった。
TOBの買い手は、最多がアクティビスト(物言う株主)を含む「ファンド」の22社で約3割を占め、アクティビストを含むファンドによる提案が活発なことがうかがえる。また、親会社が株式取得のために設立した会社などの「親会社系」が18社、「同業他社(大株主以外)」が15社、「大株主(ファンド除く)」が14社と続き、異業種の技術を自社の成⾧に取り込みたい企業などの「その他」も11社あった。
東京証券取引所(以下、東証)は2023年3月、プライム市場とスタンダード市場の上場企業約3,300社を対象に、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請した。これを受けて、上場各社は資本収益性や中長期的な企業価値向上に向けた具体的な計画を策定。東証は取り組み状況を一覧表で公表し、働きかけを継続している。
近年はPBR(株価純資産倍率)が1を下回る企業に対し、アクティビスト投資家が一定割合の株式を保有し、企業価値向上に向けて影響力を発揮するケースも目立つ。
企業の中には収益性向上に抜本的に取り組むため、アクティビストを含むファンドの傘下に入り上場を廃止するケースもある。一方、アクティビストなどの標的になる前にMBOなどで上場廃止を選択する企業も目立つ。
また、グループ全体の資本効率の向上を目指し、親会社が上場子会社にTOBを実施する「親会社系」のケースもあり、経営資源の適切な配分に留意する動きが強まっている。
東証はその後も、東証株価指数(TOPIX)構成銘柄の変更、グロース市場の上場維持基準の見直しなど、上場企業に企業価値向上への取り組みを促す施策を相次いで要請している。
このため、今後もTOBやMBOが活発な状況が継続する可能性が高い。
※ 本調査は、自社開示、金融庁・東証などの公表資料に基づき、2025年内にTOB・MBOの実施を開示した企業を集計した。
(進行中、および今後開始の企業も含め、2026年1月15日までの開示を集計対象とした。)
※ 同一企業に複数のTOB・MBOが発表された企業は、上場廃止を前提とするTOB・MBOが開始予定、進行中、成立のいずれかの場合にカウントした。上場維持のTOB・MBOが成立した場合でも、当初上場廃止予定だったTOB・MBOが不成立となった場合は不成立にカウントした。
※ TOKYO PRO Marketだけの上場企業、不動産投資法人(REIT)は除外した。
※「親会社系」は発表前の保有割合が50.0%以上、「大株主」は発表前の保有割合が50.0%未満で、被買収企業による直近の開示で大株主名簿に記載がある企業を対象にした。ただし、ファンドは除外した。
※ 本調査は、今回が初めての実施。
2025年に上場廃止を前提とするTOB・MBOの実施を発表した上場企業は112社で、内訳はTOBが80社、MBOが32社だった。
TOB80社の買い手の内訳は、アクティビストを含む「ファンド」22社(構成比27.5%)、親会社や親会社が株式取得のため設立した会社などの「親会社系」18社(同22.5%)、「同業他社(大株主以外)」15社(同18.7%)、「大株主(ファンドを除く)」14社(同17.5%)、「その他」が11社(同13.7%)だった。

上場区分別は、「プライム」が49社(構成比43.7%)で最多。次いで、「スタンダード」が47社(同41.9%)で続く。
新興企業の多いグロース市場は、2024年1月以降に上場した企業に割り当てられるアルファベットを含む証券コードの企業も1社(レジル(株)、176A)あった。
東証によるグロース市場の上場維持基準の変更は、上場を目的にした「上場ゴール」を防止したい狙いがあるとみられる。

2025年に上場廃止を前提とするTOB・MBOを発表した112社のうち、5社は不成立に終わった。
不成立の5社のうち、(株)ソフト99コーポレーションとウェーブロックホールディングス(株)の2社は、MBO発表後、既存株主やアクティビスト投資家からMBO価格の引き上げを求められたが、買付予定数の下限に応募株数が届かず不成立となった。その後、ソフト99コーポレーションはファンドが上場廃止を前提としない対抗TOBを実施し、TOBが成立した。
MBOは、既存株主と買い手である経営陣の利害が一致せず、可能な限り安く買付けを実施したい経営陣の思惑を勘ぐられることもある。近年、株主要求で成立した事例も含め、発表後に価格変更するケースも目立つ。特に、当初発表の買付価格のPBRが1を下回るケースや、PBRが1を超える場合でもPBRが業種平均の価格水準を要求されるケースもある。
TOBが不成立となった東京コスモス電機(株)は12月4日、TOBを巡る特別調査委員会の調査報告書を公表した。同社を巡っては6月10日、米国企業がTOB開始を発表していた。6月24日開催の株主総会では、会社側提案の取締役候補5名が全員否決され、アクティビスト株主が提案した取締役候補8名が全員選任される異例の事態で注目された。その後、新経営陣は旧経営陣が米国企業によるTOBを決定するに至った経緯の適切性に疑義が生じたとし、経緯を解明するための特別調査委員会を設置した。
調査報告書では、米国企業によるTOB実現に向け、価格設定などを助言するFA(フィナンシャル・アドバイザー)に企業価値を低く算出するよう強く要請していたことが明らかになった。
具体的には、中期経営計画の5年間の売上計画は不確実性が高く、期間がより短く保守的な3年間の計画を採用するよう要請していたという。加えて、米国企業との買収協議を重ねていた時期に、米国企業による買収の成立を優先するため別の買収提案の協議を意図的に遅らせた点も問題視された。
本来、株主の利益を追求すべき上場企業の経営陣が、特定企業への買収成立を優先するため企業価値の低い算出を要求するなど、異例の展開が明らかになった。
株主軽視のTOB、MBOは、計画の頓挫や価格面などで恣意的な要求を受ける可能性もある。このため、少数株主などを含めた幅広い株主の理解を得られる価格設定が重要になっている。
東証も様々な改革を打ち出しているが、割安な株価を放置する企業はアクティビストの標的になりやすく、買収価格が争われるTOB、MBOが増える可能性もある。

2025年の「病院・クリニック(歯科医院を除く)」倒産は41件(前年比5.1%増)で、3年連続で前年を上回った。2006年以降の20年間では、最多の2009年(42件)に迫る2番目の高水準となった。
負債総額は、253億1,900万円(同12.1%増)で、コロナ禍の2020年を底にして、5年連続で前年を上回った。負債1億円以上が31件(同29.1%増)と全体の75.6%を占めた。地域医療の核となる病院の苦境が表面化し、負債が膨らむ傾向が強まっている。
医療機関は、理事長・院長の高齢化や医師、看護師の不足、医療設備の老朽化など、もともと課題が山積している。ここに光熱費や薬品・消耗品などの物価上昇、人材確保に伴う人件費上昇も加わり、病院経営を圧迫している。
厚生労働省が公表する「第25回医療経済実態調査」によると、一般病院の約7割、クリニックの約4割が赤字で、医療機関は規模の大小にかかわらず経営悪化が深刻さを増している。
医療機関の収入源である診療報酬が、物価高騰や賃上げに追いつかないことが大きな要因だ。
業態別の倒産では、ベッド数が20床以上の「病院」が12件(前年比71.4%増)と1.7倍に大幅に増加し、地域医療を担う中堅規模の病院の倒産が際立っている。10件を超えたのは、2010年の12件以来、15年ぶり。
従業員数別は、「300人以上」が2件(前年同数)発生。また「50人以上300人未満」が10件(同5件)、「20人以上50人未満」が5件(同2件)と、いずれも前年を上回った。
医療機関を取り巻く環境は厳しい。収入頭打ち、コスト青天井の環境では、医療機関の倒産増は避けられないだろう。診療報酬の見直しやM&Aなど、存続に向けた取り組みは待ったなしだ。
※本調査は、日本標準産業分類の「病院」「一般診療所」から負債1,000万円以上の倒産を集計、分析した(歯科医院を除く)。
原因別:最多の「販売不振」は26件(前年比52.9%増)で、63.4%を占めた。次いで、「既往のシワ寄せ」が8件(同38.4%減)、「他社倒産の余波」が3件(同40.0%減)と続く。
形態別:「破産」が40件(前年比11.1%増)と、97.5%を占めた。再建型の「民事再生法」は1件(前年2件)にとどまった。
負債額別:「1億円以上5億円未満」が19件(前年比11.7%増)で、ほぼ半数(46.3%)を占めた。このほか、「10億円以上」(前年比20.0%増)と「5億円以上10億円未満」(同200.0%増)が各6件。負債1億円以上は31件(同29.1%増)で、75.6%を占めた一方で、1億円未満は10件(同33.3%減)にとどまり、中堅規模の行き詰まりが目立つ。
従業員数別:最多が「5人未満」の15件(同6.2%減)。次いで、「50人以上300人未満」が10件(同100.0%増)で2倍に増加した。


「新型コロナウイルス」感染拡大から5年が経過し、円安を追い風に、輸出産業や大企業を中心に業績改善が進み、賃上げや設備投資の動きも広がっている。
だが、こうした持ち直しの動きが一様に行き渡っているわけではない。中小企業に目を向けると、売上が回復しても、原材料費や人件費の上昇が重くのしかかり、収益改善は限定的にとどまる企業も少なくない。
この回復状況の濃淡は、地域によってどのように表れているのか。それとも、エリアを問わず共通の課題を抱えているのか。東京商工リサーチの持つ企業の業績データを手がかりに、中小企業が置かれた現状を探った。
※東京商工リサーチの企業データベース(約440万社)から、2024年10月期-2025年9月期を最新期とし、6期連続で売上高・純利益が判明した中小企業を抽出し、エリア別の業績動向を集計した。なお、金融・保険業は分析対象から除いている。エリアは本社および本社機能がある地点で集計した。
※中小企業の定義は、「中小企業基本法」に基づく。従業員数は正社員数を採用。
2024年10月期-2025年9月期を最新期として抽出した、中小企業の全国平均の水準は、売上高10億8892万円、純利益3770万円で利益率は3.46%だった。コロナ禍直前期~初頭の5期前(2019年10月期-2020年9月期)と比較すると、売上成長率が14.4%増、利益率上昇幅は0.84ポイント増となった。
一方、赤字企業率は21.5%から23.8%へ上昇。全体の平均数値は改善しているが、赤字に転落する企業も増加し、企業間の業績格差は拡大している。
地区別(本社地ベース)の業績を比較すると、売上規模・利益水準ともに地域間の格差は大きい。地区別で業績の回復が目立つのは関東で、平均売上高は17億96万円、平均純利益は6454万円、利益率は3.7%に達した。売上・利益ともに他地区を大きく上回り、5期前比の売上成長率も16.1%増と高水準だ。
関東内で県別の業績をみると、企業数が圧倒的に多く、中小企業の中でも規模の大きな企業が多い東京都が業績をけん引している。
このほか、平均売上高、売上成長率の高さで目立つのは、群馬県だ。製造業や卸売業、情報通信業などで平均売上高が大きく伸びている。群馬県は中小・中堅規模の製造業が多く、円安が進む状況下で上手く業績を成長させた製造業を起点に、卸・小売業、情報通信業など、幅広い産業に好業績が波及したと考えられる。関東圏に属しながら、地価・人件費が相対的に低い環境で、利益率も地方エリアの中では比較的高水準になっている。
利益率・利益率上昇幅では、震災復興需要などを背景に建設業や運輸業で収益性の改善が進む北陸がそれぞれ3.53%、1.22ポイント増と高かった。
一方、数字の低さが目立つのは、東北だ。平均売上高は6億4653万円で四国に次いで低い水準、平均純利益は1392万円でワーストとなり、赤字企業率は唯一、3割を超えた。5期前からの売上成長率が8.7%増、利益率上昇幅0.22ポイント増と他地区と比べて物足りない水準にとどまった。
県別で、5期前からの売上成長率が最も高かったのは熊本県の25.5%増。世界一の半導体受託メーカーであるTSMCの進出効果で、製造業を中心に様々な産業で売上を伸ばしていることがわかる。
ただ、半導体企業を中心に人材獲得競争が発生し、地方としては賃金上昇圧力が急激に上昇。さらに、地価など様々な物価が上昇し、5期前と比べた利益率上昇幅は0.04ポイント減と低迷している。
売上成長率が23.1%増と2番目に高かった京都府は、利益率上昇幅も1.21ポイント増と高水準だった。価格転嫁が進み、効率的に利益を生み出した企業が多いようだ。
利益率上昇幅が最も高かったのは石川県で、1.90ポイント増。サービス業他や建設業などが売上高・利益を伸ばし、利益率が大きく上昇した。

次に、10産業で地区ごとに業績の特徴が目立った産業を抜粋してみていきたい。
まず、農・林・漁・鉱業では、関東が平均売上高21億8908万円、平均純利益1億8311万円で突出した。5期前と比較した売上成長率も43.3%増と他地区を大きく引き離している。東京に本社機能を置く資源開発会社など、一部の鉱業関連企業が売上・利益の金額を大きく押し上げた格好だ。なお、エネルギー資源や金属価格の上昇などで売上高は大きく上昇したが、売上よりコスト増のスピードが速く、利益率は低下している。
農・林・漁・鉱業のうち社数が多い農業では、北海道が平均売上高6億4967万円、平均純利益2719万円でそれぞれ首位に立った。1戸あたりの耕地面積が大きい北海道は、設備投資による生産効率向上の効果が出やすく、利益率も唯一、4%を超えている。ただ、赤字企業率は5期前と比較して2.9ポイント増と増加し、企業間で明暗が分かれた。
利益率の高さでは、北海道に次いで、近畿3.4%、四国3.36%、中国3.33%と西日本が並んだ一方で、九州が全国で唯一、マイナスとなった。九州の農業は畜産の構成比が高く、飼料代や水道光熱費の高騰など、円安の影響を受けたとみられる。

建設業の地区別業績をみると、売上規模では関東がトップ。平均売上高5億507万円、平均純利益1998万円と他地区を大きく上回り、都市再開発や大型案件の集中が大企業から中小企業まで受注金額を押し上げている。一方で、利益率は突出して高い水準にはなく、人件費や資材価格の上昇の影響がにじむ。
中部や北陸は、売上規模こそ関東に及ばないが、利益率は4%超と相対的に高く、工場・倉庫、震災復興関連のインフラ整備などの非住宅工事の案件が比較的多いことが奏功しているとみられる。
建設業全体では5期前と比較して売上・利益率ともに上昇したが、全ての地区で5期前と比べて赤字企業率が上昇し、業績を改善させた企業とそうでない企業で二極化が進む。

製造業でも関東が平均売上高25億6935万円、平均純利益1億18万円と全地区で最高水準だった。利益率は3.89%と高く、5期前比の利益率上昇幅も1.84ポイントと最大だった。
売上成長率で最も高いのは九州で、21.95%もの伸びを記録した。平均売上高は22億5477万円、平均純利益は5805万円に成長し、半導体関連などの設備投資効果が表れた。ただ、九州は利益率の伸びが0.59ポイント増と微増にとどまり、中小の製造業では人件費などのコストアップで厳しい状況が表れている。

卸売業では、関東が平均売上高36億6136万円、平均純利益6758万円で独走する。だが、関東の利益率は1.84%で高水準とは言えず、薄利構造が続いている。
利益率では、中部が2.3%でトップだった。5期前と比べた利益率上昇幅も0.93ポイント増と最も大きく、採算改善が際立つ。
小売業は、関東が平均売上高13億9799万円で首位に立った。ただ、5期前と比べた売上成長率は2ケタ増の地区が多いなかで唯一の1ケタ、3.1%増にとどまり、他産業と比べて他地区との平均売上高の差は小さかった。
売上成長率では、トップの中部が22.5%増、次いで九州が21.7%増、北海道が20.7%増で続いた。収益性では、四国が利益率2.7%、利益率上昇幅1.73ポイント増と高さが目立った。

情報通信業では、関東が平均売上高19億831万円、売上成長率58.8%増と突出する一方、利益率が1.3%と5期前と比較して低下した。需要が急拡大する一方で、競争激化により収益性の低下に悩む中小企業が増加しているとみられる。
利益面では、北陸が平均純利益8581万円、利益率7.8%で突出するほか、四国も平均純利益4215万円、利益率6.5%と高水準だ。すでに高水準だった5期前と比較しても利益率は伸びており、都市圏よりも競争が穏やかな環境下で地元需要をしっかりと取り込み、高収益体質を維持していると考えられる。
情報通信業では、全ての地区で5期前と比べて赤字企業率が上昇し、収益力が低下した企業が増えた。

地区別・産業別に中小企業の業績を俯瞰すると、多くの地域で売上は5年前を上回っている。売上高だけを見れば、日本経済は着実に拡大しているようにも映る。
ただ、売上増の背景を掘り下げると、仕事量や需要の増加よりも物価高の進行で、原材料費や人件費、サービス単価など、あらゆる金額が押し上げた結果、売上が膨らんでいる側面が大きい。全体では、売上成長率に比べて利益率の上昇は総じて緩やかな傾向で、地区や産業によっては低下しているケースも見られる。全体として赤字企業率は上昇し、エリアを問わず企業間の格差が広がる産業もあり、売上の成長が収益力の強化につながらず、“利益なき成長”をたどっている可能性がある。
利益率の上昇幅は限定的ながらも、プラスを維持している以上、企業が生み出す利益の金額自体は着実に積み上がっている。ただ、売上が拡大する中で、利益の「絶対額」は増えているが、売上の伸びほどには利益が増えていない点には注意が必要だ。
利益率やその変化に目を向けると、成長の「中身」にはばらつきがあることがわかる。観光業の回復や設備投資、地域特有の需要拡大など、仕事量や需要の拡大が比較的はっきりしている地域や産業では、利益率もあわせて上昇しているケースが確認できる。単価上昇にとどまらず、業務効率の改善や受注内容の見直しが進み、収益改善につながっている可能性もあるだろう。
同じ物価高、同じ人手不足、同じ円安環境の中でも、売上増を利益につなげられる企業と、そうでない企業に分かれつつある。成長の「量」ではなく、「中身」が問われる局面に、日本の中小企業は足を踏み入れている。


✔原因別:「販売不振」が45件(前年比4.6%増、構成比81.8%)で最多。次いで、「他社倒産の余波」が6件(同100.0%増、同10.9%)、「既往のしわ寄せ」が2件(同50.0%減、同3.6%)と続く。
✔資本金別:「1百万以上5百万円未満」が25件(前年比13.6%増、構成比45.4%)で最多。以下、「1千万円以上5千万円未満」が10件(同11.1%増、同18.1%)、「個人企業他」が9件(同10.0%減、同16.3%)の順。1億円以上は発生しなかった。
✔負債額別:最多は「1千万円以上5千万円未満」が46件(前年比24.3%増、構成比83.6%)で、以下、「5千万円以上1億円未満」(同25.0%減、同10.9%)が6件。
✔従業員数別:「5人未満」が51件(前年比24.3%増、構成比92.7%)で最多。以下、「5人以上10人未満」が2件(前年比60.0%減、同3.6%)。


2025年の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は454件(前年比1.9%減)で、6年ぶりに前年を下回ったが、過去2番目の高水準だった。
後継者がいないため倒産に追い込まれる企業は多く、2022年から4年連続で400件台で高止まりしている。
要因別では、代表者などの「死亡」が224件(同13.1%減)で、ほぼ半数(構成比49.3%)を占めた。また、「体調不良」も158件(前年比4.6%増)発生し、この2つの要因で84.1%を占めている。代表者の健康上の問題が、経営には大きなリスクになっている。
「後継者難」倒産454件のうち、資本金別では1千万円未満が280件(前年比1.0%増)で、全体の61.6%を占めた。形態別では、破産が426件(同0.4%減)と9割(構成比93.8%)を超えた。
近年、政府や金融機関、企業再生ファンドなどを中心に、事業承継や廃業支援などの取り組みに動き出している。だが、コロナ関連支援の副作用で過剰債務を抱え、業績回復の遅れから後継者の育成や事業承継まで手が回らない企業は少なくない。このため、親族や社内に加え、社外からも人材を供給する施策も必要だろう。
※本調査は2025年1-12月の「人手不足」関連倒産(負債1,000万円以上、後継者難・求人難・従業員退職・人件費高騰)のうち、「後継者難」を抽出し、分析した。

